ホワイトノイズジェネレーター
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 トランジスタやダイオードに一定以上の逆電圧をかけると、ブレークダウン(降伏)をおこす。
 この時にホワイトノイズを発生するので、これを広帯域アンプで増幅して、ノイズ源として利用する。

 どの程度の電圧でブレークダウンするか、とか、どんなノイズを発生するかはやってみないと分からない。

 可変電圧の定電圧電源で、少しずつ電圧を上げながら、ノイズのスペクトルを観察する。

 トランジスタ技術には定電流電源でやるように書いてあった。そう言えばそうするのが正しいような気がする。定電圧特性を示す素子に、定電圧電源をつなぐのはおかしい。

 今回は作ってしまったので、仕方がない。間に抵抗(800Ω)を入れてごまかす。

 回路図
  
 右側が広帯域アンプ、左側が定電圧電源。間にテスト対象が入る。

 電圧は左上の半固定抵抗で調節する。

 アンプの電源は9Vだが、テスト対象には15Vくらいまで試したいので、9Vの電池を2個つなぐ。

9V電源だと、3端子レギュレーターと800Ωの分を引くと、最高6Vくらいしかかけられない。
 リファレンスのためにローカルさんから借りたPalomar社製R−Xノイズブリッジ。

 Rは0〜200Ω、キャパシタンスが−70〜+70pFまで測れる。
 上の機械のノイズパターン。

 周波数と共に急速に低下する。ホワイトノイズと言うよりはピンクノイズだ。80MHz辺りでほぼ0になっている。

 60MHzくらいが実用限界か。

 70MHz付近の小ピークは外来ノイズだろう。
 上の機械の配線図。

 ツェナーダイオードで発生させたホワイトノイズをトランジスタ3段アンプで増幅、トランスブリッジでRとXを測定している。

 2N5770は2SC1906あたりと同じようなキャラクターの高周波用トランジスタらしい。

 これで発振しないのは、実装技術が高いのだろう。
 これは、私が1年ほど前に、FCZ研究所のノイズブリッジを参考に作った物。

 ノイズが弱くて、外来電波に負けてしまう。

 ちょっと実用にならない。
  その機械のノイズパターン。

 ほとんどフロアレベルで、これでは使えんわなぁ。

 外来ノイズの方がずっと強い。
  
 以下、今回の実験データ。

 はじめは9V電池1個で2SC1815を測定してみたが、全くノイズが発生しない。

  
 そこでfT=1000MHzの2SC1906を試す。

 2SC1906にかかっている電圧は5V。

 少し弱いが、パロマー社のノイズよりかなり良い。

 500MHz以上まで伸びていて、ピンクだがホワイトに近い。

 電圧をあげてもノイズは強くならない。
 次に2SD355をやってみたが全然ダメ。

 ははぁ、なるほど。fTの高いのでないとダメなのか、と思って、これが(多分fT=800MHzくらい)の2SC387A。

 電圧は5.5V。

 2SC1906の方が良い。
 それではfT=7GHzの2SC3355。

 電圧を最大の6Vにしても、全然ダメだった。

 そこで、電池を2本にして、7Vの電圧をかけると、あまり強くないが、ホワイトな良いノイズが出る。
 ありゃ、電圧が高くないといけないのか。

 と思って、安物の2N3904(2SC1815コンパチ)に8Vかけてみた。

 今までで一番良いじゃないか。

 発生するノイズの周波数成分とfTとは関係ないのかも知れない。
 それならば、 敗者復活戦。

 2SC1815に8Vかけると、右の通り。

 これも十分使える。
 2SD355に8V。

 やっぱり高い周波数はダメみたいだが、100MHz以下に限れば、パロマー社のブリッジのノイズより良いくらいだ。
 周波数の低い部分のアップ。

 ノイズブリッジは、100MHzより高い周波数の物を作るのは、構造的にかなり難しい。

 100MHz以下の測定に限るのなら、2SD355のノイズがベストかも知れない。
 fT=7GHzのチップトランジスタ2SC5064。

 チップ抵抗でダミーロードを作ったのと同じ要領で、紙エポ基板のチップに半田付けして、足を生やす。

 8Vかけると、下の通り。
 さすがにfTの高いトランジスタは違う。400MHz辺りに成分のピークを持つノイズだった。

 実用的には、このトランジスタを使うメリットは無いだろう。
  
 実験は以上だが、結論はこれから先どんな物を作ろうとするのかによる。


【結論】
(1) 電池1個(9V)+定電圧電源で、ノイズを発生できるのは、2SC1906だけだ。

(2) 電圧が7V以上なら選択肢は多くなる。

 500MHzくらいまで、きれいなノイズが欲しければ2N3904か2SC1815が良さそうだ。

 100MHz以下に限るなら、2SD355のノイズは強力だ。

(3) 電圧(電流?)はノイズを発生するギリギリ低い方が、低い周波数(100MHz以下)のノイズ成分が高くなる。それ以上電圧を上げても、ノイズ電圧は高くならない。

(4) ここにあげなかったが、ツェナーダイオードとJ−FETはそれぞれ2種類やってみたが、全然ダメだった。


 また、上の写真の多くには500MHzから1GHzの間に、訳の分からない凸凹がある。

 ホワイトノイズ源としては500MHzまで有れば十分と思われるし、広帯域アンプが700MHzより上は怪しいので、500MHz以上の凸凹については詮索しない。


 はじめに書いたように、さらに厳密な実験をするのなら、定電流電源を使うべきだ。