お手抜きリターンロスブリッジ
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 これが出来上がりだ。

 何だこれは。これのどこが、「要点を押さえている」んだ、と思うでしょう。

 では、ここでは50Ω系のアンテナの調整にリターンロスブリッジを使うものとして、考えてみよう。
 リターンロスブリッジの復習。

 入力されたRF電圧を、R1とRrefで分圧した電圧がA点に、R2とRxで分圧した電圧がB点に出てくる。

 従って、「R1:Rref=R2:Rx」の時にA点とB点の電位が同じ、即ちRFout=0になる。
 
 ここで、R1=R2とすれば、「Rref=Rx」の時、RFout=0になる。

 つまり、「R1=R2」であることが大切なのであって、ちょうど50Ωである必要は無い。(別の理由から、50Ωに近い方が都合が良いが。)



 一方で、RrefはRxを求める基準になるので、50Ωにできるだけ近い方が良い。では、どれくらい近ければ良いのか。

 SWR=Rx/50だ。(またはSWR=50/Rx、小さい方を分母にする。)例えば、50Ωのフィーダーに75Ωのアンテナをつないだら、SWR=75/50=1.5になる。

 普通の市販の抵抗は誤差5%だ。従って、市販の50Ωの抵抗をRrefにしたら、最悪の場合、SWR=1.00のはずが、SWR=1.05と表示される。(または、その逆。)

 SWR=1.05といえば、ほぼ完璧にマッチングしている状態だ。十分じゃないか。



 と言うわけで、5%精度の安物の50Ω(あるいは100Ω)の抵抗(100本で100円くらい)をたくさん買ってきて、テスターで測って、大体同じ物を2本選んで、R1とR2にする。(安物のデジタルテスターでも、小数以下1桁まで測れるから、50Ωなら0.2%、100Ωなら0.1%まで合わせられる。)

 Rrefの方は最悪SWR=1.05だから、セレクトする必要も無い。気になる人は、セレクトすれば良いが、さしたるメリットは無い。実際のところ、市販のダミーロードの誤差は相当大きいし、アンテナのSWRが0.1良くなったところで、分かるほどの効果は無い。

  
 私は、手許に200Ωの抵抗が沢山有ったので、これを4本並列で50Ωにした。

 まとめて買ったのだから、そんなにばらつきはあるまいと踏んで、あえて一切セレクトせずに、そのまま使ったが特に問題は無かった。

 ネットで見ると、「良い測定器をもっていないので、性能が出せない。」と書いている人が居るが、そんな事は全然無い。
 次に、実装の問題。

 ブリッジに流れる電流はちゃんと管理する。安易にアースしてはいけない。

 グランドに入力電流が流れないようにする

 即ち、左図の様に、「RFinのコネクタ」「Rrefの50Ω」「アンテナを接続するコネクタ」の3箇所は、1点でアースする


 RFoutのコネクタのアースは適当で良い。
   
 ソータバランのin側には入力レベルとあまり変わらないコモンモードの電圧が来ている。 それをソータバランで阻止するわけだから、ソータバランのin側とout側では数十dBの差があることになる。

 20dB程のアンプが簡単に発振してしまうのだから、数十dBの差をそのままにしておいたのでは、性能は期待できない。例えば、アッテネーターを作るのなら、ガチガチにシールドするでしょう。

 結果を見ながら、ここにはシールドを入れる必要があるかも知れない。
  
 左端はネジ式の普通のBNCコネクタ。これだと、取り付けたところがアースされてしまう。

 右の2個は絶縁型のコネクタだ。これで、アースから浮かせて、明示的にアース点まで引っ張る。
 こんな感じ。

 銅板で大げさにアースラインが取ってあるが、特に意味は無い。200MHzくらいまでなら、普通のメッキ線一本で十分だ。

 ソータバランがRxのコネクタに近づきすぎているのは、良くない。

 あり合わせの基板で作ったので、幅が狭すぎて、こうなった。
 全体的には細長い(35mm×110mm)基板に、RFinとRFoutを両端に配置して、できるだけ回り込まないように気をつけた。

 ソータバランはFB801−43にツイストペア5回を2個直列。

 で、その特性は・・・。
 Rxオープン、0〜200MHzまでの通過ロス。

 ほぼ理論値(12dB)の13,4dBフラットで、上出来。
 上記Rxオープンで規格化して、50Ωダミーロードを接続した。

 これが、このリターンロスブリッジの性能だ。

 30dBまでなら170MHz、35dBまでなら100MHzが上限だ。

 50MHzや144MHzのアンテナ調整用なら、余裕の性能だろう。
【参考】
 同様の注意をしながら、トロ活の記事そのままを、小型のアルミケースに組み立てたもの。

 基板に作るより面倒だが、性能的にはほとんど同じだ。

 ただし、抵抗は51Ωからセレクト。バランは、FB801−43にツイストペア7回。
  
 今回は、リターンロスブリッジをお気楽に作った場合、どの程度の性能か、試してみた。

 要点を押さえれば、テスターも使わずに、144MHzのアンテナ調整に使える程度のリターンロスブリッジが自作できることが分かった。



 もちろん、その上のバンド(430MHz)で使おうとすると、それなりの工夫が必要だ。

 さらにその上(1,200MHz)では、まだ十分な性能のものは製作できていない。

 少しずつチャレンジするのが面白い。