何のための放送法か   2015.4/21


・考え事にもどる

   

 放送法を読んでみると、附則が強烈に多いのに感心する。つまり、無数に改訂されているのだ。それだけ、内容を時代に合わせるのが難しい法律だと言うことだろう。

 他の法律と同じく、この法律もアメリカ(GHQ)に押しつけられたものだ。その意味で、戦後レジームからの脱却を主張する安倍自民党が、放送法を目の敵にするのはよく分かる。

 って、えっ、違うの?自民党が、「NHKや朝日放送が、放送法に違反している」と文句を言ってるんですか。そりゃまた、何の事やら。



 第2次世界大戦後、GHQは日本の大改革を進めた。放送法もその一つだ。

 新聞やラジオが政府発表を垂れ流し、ウソの情報で国民を操って戦争に駆り立てた。これを徹底的に禁止する法律を作ろうとした。


☆ 放送法の第3条
 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。

☆ 第4条
 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
1 公安及び善良な風俗を害しないこと。
2 政治的に公平であること。
3 報道は事実をまげないですること。
4 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 しかし、これらは諸刃の剣で、例えば、第2項「政治的に公平であること。」は、政府を批判する番組がこれに抵触する、と逆に政府からイチャモンをつけられる恐れがある、という議論は当初からあった。他の項目も同様だ。

 従って、GHQとしては、第4条を入れないで第3条だけにしようとする考えもあった。

 結局、当時の日本政府に押し切られたのか、GHQの内部の意見統一ができなかったのか分からないが、この条文が入ってしまった。



 70年も前に予見されていて、残念ながらその通りになってしまった。

 この度、自民党がNHKや民放に、「放送法違反の疑い」というイチャモンをつけたと聞いたら、さぞかしマッカーサーはお怒りだろう。

 何しろ、政府はラジオ(今ならテレビも)に口を出してはいけませんよ、という趣旨の法律なんだから。ハッキリ言って、この場合、放送法に違反しているのは自民党です。



 余談だが、こんな法律を作らせたくせに、GHQ自らは遵守するつもりは全然無かった。

 アメリカの宣伝活動をするために新聞・ラジオを我がもののように使ったし、さらに宣伝効果を高めるために、新聞やラジオの普及にも力を入れた。

 例えば、「第二次世界大戦において、アメリカは正義の立場にあった」という考え方は、この頃にマスコミによって吹き込まれたものだ。

 私たちは未だにこの呪縛から逃れられない。欧米とアラブが対立すれば欧米が正しいと思い、欧米とロシアが対立すれば欧米が正しい、と無条件で考えてしまう日本人が多い。

 さらに脱線になるが、沖縄の米軍基地に関するゴタゴタを見ていると、日本人がアメリカの呪縛から脱するには、あと2,3世代が必要かも知れないという気がする。それほどGHQによる刷り込みは強力だった。