裁判をしてみて、分かった事(1)   2016.3/17


・考え事にもどる

   
 私は理系人間で、政治・経済・芸術などには全く興味がなかった。

 ところが、たまたま交通事故で、保険会社の判断が気に入らなくて、自分で裁判を起こした事がある。金額的には大したことはなかったので、少額訴訟で、弁護士無しでも裁判が出来る。

 結果は、負けはしなかったが勝ちもしなかった。気持ちの悪い結末だった。


 裁判自体はなかなか面白く、法律書や判例集を読んでいるうちに、そっち方面や、さらに政治や経済にも興味を持つようになった。その後、法人の立ち上げや、土地の登記なども自分でやってみて、こういう事も(職業としてはどうか知らんが)やれば出来るものだ、と感じた。何でもやってみるものだ。


 この裁判で分かった事が2つある。

(1) 裁判は正義を求める場ではない。上手く主張した方が勝つ。

(2) 裁判官は弁護士とお友達であることがある。(ドラマみたい!)


 さて、通常の交通事故であれば、双方の保険会社が話し合って、マニュアルに従って適当に割合を決める。それは、当事者がお互いに自分の都合の良い事(ウソである事も多い)を主張して、水掛け論になるからだ。

 この時も、私は過失責任を10:0と主張したが、相手の保険会社は当然認めなかったし、こちらの保険会社も、「この辺りで手を打ったらどうですか。」と、てんでやる気がない。

 しかし、たまたま私は記録魔なので、事故直後からレッカー移動されるまでに写真を50枚ほど撮っていて、相手に100%責任がある事を証明するだけの証拠があった。

 ここで、私の大失敗は、(いい気になって)証拠をズラリと並べて、「この通り、そちらの主張はウソですね。」とやった事だ。

 相手(の保険会社)はすぐに、「あれは、うちのお客様の思い違いで、本当はこういう状況でした。」と主張を変えてきた。私が見せた証拠に合わせて、話を作ってきたわけだ。


 しまった、もっと言質を取ってからひっくり返すべきだった、と思っても遅い。

 私は(少し反省して)、残った写真を少しずつ出して相手を追い詰める事にした。しかし、その度に、相手の保険会社は「すみません、うちのお客様の思い違いでした」、と新しいストーリーを持ってくる。

 こういうやりとりを何回かして、なおかつこちらの保険会社もやる気がないのが分かったので、切り札が無くならない内に、裁判に訴える事にした。

 まさか裁判で、「すみません、うちのお客様の思い違いでした」が通用するとは思って居なかったので。


 こちらは私一人で、相手は保険会社と弁護士付きだ。相手にとって不足はない。(ウソウソ、かなりびびってました。)

 少額訴訟なので、1回で終わるのかと気負って裁判所に行ったら、1回目は被告や原告の確認と、あとは次回の日程調整だけで、数分で終わってしまった。どうやら、この段階では、裁判官は訴状を読んでもいないようだ。この日のために休暇を取ったのに。

 一方、相手側の弁護士は私の訴状をじっくり読んで、準備万端だ。(と思って居たが、後で分かった事だが、実は相手側の弁護士は新人で、てんでヘボだった。あれなら勝てたのに、と今思い出しても悔しい。)

 やっと裁判の話になったが、長くなったので、今日はここまで。次回をお楽しみに。


【補足】こちらの保険会社がやる気が無いのは、保険会社が悪いのではない。

 保険会社は「こちらが支払う額」を交渉するのが仕事だ。その立場で、相手の保険会社とすりあわせをする。普通は保険会社同士で金のやりとりをしてくれるので気がつかないが、金を取り立てるのは保険会社の本来の仕事ではない。

 私のように、過失責任そのものを争う場合には、交渉や裁判の代理人になってくれない。

 一方被告側は、実質的に、支払う額を争う事になるから、保険会社が代理人になって、弁護士もついてくる。被告は出廷もしない。(あるいは、傍聴席で見ている。)


【余談】訴えられる人の事を、刑事訴訟では「被告人」、民事訴訟では「被告」と呼ぶ。「被告人」は犯罪の容疑者だが、「被告」は単に原告と反対側の人であるに過ぎない。

 この辺が分かりにくいので、大概の人は訴えられるとビビる。最近、土地開発の反対運動などすると、開発側が反対者を訴える、というケースが問題になっている。

 逆らうなら、訴えるぞ、というわけだ。