思想はどのように形成されるか    2016.2/25


・考え事にもどる

   
  
 物理の世界では、総エネルギーが最小になる点が、システムが安定になる条件だ。つまり、エネルギーの井戸の底にいれば、それ以上落ちる心配はない。

 しかし現実には、計算に入れるべきパラメーターがかなり多い上に、パラメーター同士が独立でないということまでおこる。

 従って、現実のシステムは単純な井戸ではなくて、あちこちにくぼみのある凸凹の地面だ。エネルギーの極小値が無数にある。

 実験では、はじめに仮のパラメーターを与えて、その周辺で少しずつパラメーターを変えて、極小値を探す。

 例えば、上図で、仮に a 点に着地させて、傾斜に沿って低いところを探せば、極小値A点を見つけることが出来る。

 A点においては、どのようにパラメータを変化させても、エネルギーがかえって上昇するので、ここが底なのだと確認できる。

 しかし、これはたまたま a 点からスタートしたからそうなったまでで、本当はこの近所だけでも、A,B,C,D,Eの5カ所の極小点が有る。

 もっとも安定な点がE点であることは、神のみぞ知る。

 B点などは一見安定しているが、実はちょっと揺さぶりをかけてやると、C点に移行してしまうことがある。


 価値観や正義感も同じだろう。初期条件によって、違うところに落ち着く。そして、我こそが正しいと思い込んでいる。

 もし仮にC点にいる c さんが、経験ではなく、何かの思索によってE点の存在を知ったとしても、E点に至るためには、今の自分の価値観や正義感に反する高い壁を乗りこえなくてはならない。