栃の木峠には大きな栃の木がある。昔はこんな大木がたくさんあったそうだ。その横を登る。木ノ芽峠と言うから「峠」だと思ったら、ほとんど山頂じゃないか。サギだろ。50歳を越えてこの登りはきつい。死んでしまうわ。
 このあたりは北陸と近畿を結ぶ交通の要衝で、古代より城塞が有ったとされる。その遺構を横に見ながら、ほとんど今庄のスキー場の真上まで来てしまった。林道をはずれて少し登ったところに木ノ芽峠はある。明治天皇の行幸の碑だとか、道元禅師が通った記念の碑だとかがある。
 峠には茅葺きの古い家がただ1軒あって、60過ぎのオヤジさんがアイヌ犬のシロウと住んでいる。「歳をくっていそうですね。」と言うと、そういう顔なのだという返事だった。犬の歳は判らない。
 お茶をごちそうになった上に、帰りにはナシをたくさんもらってしまった。家の裏に30mもあるナシの大木があっていくらでもとれるという。
 木ノ芽峠から少し今庄よりに「言奈地蔵」という立派なお地蔵さんが有る。人里離れた山中だが大事に守られているようだ。
 人殺しを地蔵さんに目撃されて云々、という縁起が書いてあった。峠のオヤジさんによれば、この辺は砦がたくさん有るので軍事機密を漏らしてはならない、ということが地蔵信仰とごちゃ混ぜになったのだろう、ということだった。