私は、ボーナスをもらった時と気が向いた時に、日本ユニセフ協会と国境なき医師団にわずかずつだが寄付している。「1000円で1人の子供が救えます。」とか書いてあると、「ふふ〜ん、これで××人助けたぞ。ちゃんと蜘蛛の糸をたらしてくれよ。」とか計算して、死後の安心を金で買っている。

 これが天下り役人の懐を膨らませるだけだとすると、ちょっと困る。


 まずは日本ユニセフ協会の2009年度の決算書。

http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_keisan01-2009.html


と、国境なき医師団の2009年度の決算書。

http://www.msf.or.jp/info/pdf/report2009.pdf


 これらは団体の性格も違うので、単純な比較はできないが、とりあえず、募金・広報活動に使われるお金を比べてみよう。

☆日本ユニセフ協会の場合
 日本ユニセフ協会は募金活動をするための団体なので、収入からユニセフに収めた金額を引いた残り全部が募金・広報活動費と見なして良い。上の決算書から、

総収入=約190億円
ユニセフに収めた金額=約163億円
募金・広報活動費=190−163=37億円
総収入に対する募金・広報活動費の比率=100×37÷190=19.5%


☆では国境なき医師団の場合はどうか
 こちらは色々な活動をしているので、募金・広報活動費だけを選び出してみると、

総収入=約40.1億円
募金・広報活動費=約11.7億円
総収入に対する募金・広報活動費の比率=100×11.7÷40.1=29.2%


 というわけで、国境なき医師団より日本ユニセフ協会の方が、かなり効率的な募金活動をしていることが分かる。ただし、これは全活動の規模にもよるので、単純に国境なき医師団が非効率的だということにはならない。ともかく、国境なき医師団に対しては、日本ユニセフ協会に対するような批判はないようだ。

 まあ、パーセントより37億円という金額が問題だ、とか、そもそもこの決算書が怪しい、とか言うなら別だが、日本ユニセフ協会へのきびしい批判が濡れ衣だということは分かる。

 なお、どちらの団体も募金・広報活動費が多すぎる、という考えもできる。しかし、お金を集めるにはそれなりの費用がかかる、ということは自分でやってみれば分かる。


 もちろん黒柳徹子さんに寄付を託すのも良いと思う。窓口の選択肢があるのは良いことだ。ただ、どこから広がったのか分からないが、日本ユニセフ協会に寄付してはいけない、というような悪質なデマで、救われるべき命が失われるのは大変残念なことだ。


 これらのサイトやブログや掲示板を書いている人は、(彼らが黒柳徹子さんに寄付しているかどうかは知らないが)、悪気どころか善意あるいは正義感でやっているのだろう。悪質なデマと言うより、都市伝説と言うべきかもしれない。


 なお、日本ユニセフ協会の職員が「天下り役人なのか」「給料は高いのか」「横領や不正行為はしていないのか」については、一次資料が見つからなかった。うわさ話はたくさんあったが。


 高時村にはこんなことわざがある。「げなげな話は嘘じゃげな」。現代語訳→「〜だそうだ、というような話は嘘だそうだ。」(ネットで調べると、このことわざは日本全国にあるようで、案外出所は新しいかも知れない。例えば、ラジオ番組とか、漫才とか。エンタツ・アチャコあたりが言いそうだ。)