紙に書く

・仕事術にもどる

   

 私は物覚えが悪い(=長期記憶が弱い)。ものを考えるのが苦手だ(=短期記憶が弱い)。なにしろ記憶力が強力にダメなので、それを補うべく工夫が必要になる。

 大体はメモとノートで何とかなる。憶えるためにも考えるためにも、とにかく書き出す。



 以前にも書いた事があるが、私が今までの人生で最高のパフォーマンスを出したのは大学受験だ。

 あの時には、B4のザラ半紙を、1年間で1,500枚使った。1枚の紙に、まず緑のボールペンで数学や理科の計算問題を解く。その上から赤のボールペンで英語の単語や例文を書く。その上から黒のボールペンで、もう一度英語の単語や例文を書く。3回重ねて書くと、もう真っ黒だ。書くのが目的だから、後から読めなくても良い。

 つまりB4の用紙を裏表3回ずつ使ったので、1年間で9,000枚分書きなぐった事になる。後にも先にも、あれほど濃い時間を過ごした事はない。



 その後そんなに書かないし、今ではまるで書かなくなった。しかし、いくら少なくなったとは言え、パソコンやスマホが紙のメモやノートの代わりになるとは思えない。

 私は平文なら、キーボードで比較的速く打てると思っているが、スマホやタブレットでは無理だ。さらに、書いた文書に強調や注釈を入れたり、図を含むメモを取るなどは全く出来ない。

 ワープロ検定の指導を何年間かした事があるが、高校生だと二級くらいは簡単にとれてしまう。二級の速度問題は10分で平文500文字ほどだ。文書作成は20分でA4文書1枚。

 若い人はLINEなど、ものすごいスピードでスマホに打ち込んでいる。しかしそれでも、冷静に見てみれば、キーボードで打つよりはかなり遅いという事が分かる。(電車の中で、いつものぞき込んでいる怪しいオヤジは私です。内容に興味はないのです。ごめんなさい。)当然、手書きよりずっと遅い。



 雑誌で仕事術の特集など読むと、昨今はスマホでメモを取るという人がたくさん居るようだ。しかし、そんな事で密度の濃い仕事が出来るのか疑問だ。

 雑誌にいわく、出張のレポートなどは、移動中などにメモや資料をスマホで打ち込んで自分宛にメールをしておけば、半分出来上がったも同然だ。会社や家に帰ってその資料を仕上げるだけで一仕事終わる。

 はてさて、そんなに上手く行くものかな。だいたい、どんな仕事でもいきなり始めるより全体像を考えてから手をつけた方が、結局は早い。とりあえず出来る事から取りかかるなどは、下の下だ。

 資料をスキャンしたりタイピングしたりするのはたいした手間ではないのだから、帰ってからやればよい。移動中のように邪魔が入りにくくて集中しやすい環境では、もう少し頭を使う作業をした方が吉と思うぞ。