自動連動コンセント
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 一見、山奥の村にある何でもない物置小屋だが。
 その中は木工用の電動工具がぎっしり詰まった、木工男の秘密のアジトだった。
 何しろ山の中なので、夏場は開け放って、埃でも木くずでもまき散らせばよいのだが、冬は寒いのでそうもいかない。

 閉め切った中で木工をしようとすると、集塵機は必需品だ。
 そこで彼の注文は、丸ノコやカンナを使うと、自動的に集塵機がオンになる仕掛けを作って欲しいということだった。

 もちろん、そういう仕組みが内蔵された集塵機は市販されている。しかし、かなり高価だ。
 従って、注文には、さらに「安価に」が付く。

 で、できあがったのがこれだ。

 見た目はただのコンセントボックスのようだが、手前に放熱板が見えているとおり、中身は電子回路だ。
 中身はこんな具合。トライアンドエラーで作ったので、微妙にゴチャゴチャしているのは、ご愛敬。

 丸ノコに電流が流れたのを検出するセンサー、コントロール回路、集塵機を動かすリレー、電源などが詰め込んである。

 上の写真の放熱器はソリッドステートリレーだ。
 センサーというのも大げさで、丸ノコにつながる配線の一部を5,6ターンのコイルにして、中に50mHのチョークを突っ込んだだけだ。

 トランスを形成しているから、電流が流れると、チョークに電圧が生ずる。その電圧を検出して、リレーをオンにすればよい。
  ネットを眺めていたら、まったく同じ意図で、chappyさんという人が連動コンセントを作って居た。残念ながらサイトを閉鎖されたようなので、下に回路図を示す

 また、アマゾンなどで出来合いのものを買うことも出来る。(6,7千円するけど。)

 さすがに頼まれものなので、空中配線はやめて、ジャノメ基板にガッチリ作る。
 ソリッドステートリレー用のトライアックは放熱器につけて、放熱器だけケースの外に出す。

 木工室はほこりっぽいので、放熱器以外はケースの中に密閉する。

 埃が積もって、湿気たりしたら、電子回路的には有り難くない。
 今日、彼の所に納品に行ったら、「2個頼んだはずだけど。」とのこと。

 彼が言い忘れたのか、私が聞いていて忘れたのか。

 何しろ、もう一個作ることになって、彼がボックス用の部材をチョイチョイと作っているところ。木工の手際のよさは全然かなわない。
  
 自動連動コンセントを製作しようとググっていたら、chappyさんのサイトを見つけた。全く同じコンセプトなので、デッドコピーさせてもらった。

 chappyさんのサイトが閉鎖されたか移動したようで、見あたらないので、勝手ながら回路図を引用させてもらう。(著作権はchappyさんにあるので、勝手に再引用しないこと。引用する場合は著作者を明記。chappyさんに連絡を取れる方は、本人に断って下さい。)
  
  
 動作原理が分かりにくいと思うので、概念図を描いておく。
  
 細かいことを言うと、オペアンプはLM358を使ってあるが、汎用オペアンプなら何でもよい。

 TR5は2SC1815でなくても、2SC**か2SD**なら、ほぼ何でもよい。私は、R11とR12を内蔵した「デジタルトランジスタ」と使った。

 ソリッドステートリレーは突入電流に結構強いので、集塵機のワット数以上あれば、そんなに大きな物でなくても良い。

 ダイオードは1S1588を使ったが、これも小信号用シリコンダイオードなら何でもよい。

 R7とR8をかえると、オン・オフの遅延時間を変えることが出来る。

 コンパレーターにヒステリシスが必要な気もするが、このままでも全く問題ない。



 ほぼchappyさんの丸写しだが、一箇所だけ変更した。

 (注1)のダイオード(回路図ではR8(100kΩ)に並列)だが、これはアタックを速くするためだ。

 オリジナルの回路の動作は以下の通り。

(1) カンナのスイッチが入ると、検出された電流は整流されて直流になる。

(2) R8を通じてC5が充電されて、一定以上の電圧でコンパレーターがオンになる。

(3) カンナのスイッチを切ると、直流電圧が0Vになって、C5の電荷が逆流する。

(4) この時、電荷はR8とR7を通るので、オンになったときより時間をかけてオフになる。

 カンナが回り出すと、一瞬遅れて集塵機が動き出す。これは、カンナと集塵機が同時にオンになると、突入電流でブレーカーが落ちるかも知れないからだ。

 また、カンナが止まってもゴミは残っているので、集塵機はしばらく回ってから停止する。

 簡単な回路で、賢い動作をする素晴らしいアイデアだ。



 ところが、私の依頼人はイラチ(気が短い)なので、カンナを動かした時、集塵機の動作が遅れるのが気に入らない。

 「うちのブレーカーは落ちないから、カンナと同時に集塵機も動き出すようにして欲しい。」という注文がついた。

 そこで、C5の充電を、R8を通らずに一気に充電できるようにダイオードでバイパスした。

 停止する時は、chappyさんのオリジナルの通り、しばらく回ってから止まる。

 このダイオードに直列に抵抗を入れれば、停止するまでの時間とは独立に、回り出すまでの時間を調節することも出来る。(あまり必要とも思われないが。)



 回路も部品も特殊な物ではないので、すぐに作れるが、こういう物は「頑丈さ・信頼性」が大切だ。

 木工室で使うので、ちょっと蹴飛ばしたくらいでショートして火が出るようでは論外だ。