塩化ビニルの誘電率と、短縮率の関係
・シュペルトップにもどる
 これは、「塩ビ工業・環境協会」という団体のサイトに有ったデータだ。
 
 他のプラスチックの誘電率のデータが100MHzまで有るのに、塩ビだけ1MHzまでだ。

 しかも、1KHzの値が4.55であるのに,1MHzの値は3.3に低下している。

 表のとおり、塩化ビニルの誘電分散(誘電率の周波数特性)は大きい。これは塩素分子が大きいので、質量も電子の数も多いからだろう。

 この様子では、数百MHz以上では誘電率が1.0近く、即ち、誘電体として作用しないかも知れない。

 したがって、誘電損失が大きいことも想像できる。

 上の表で、100MHzのデータが無いのは、誘電損失が大きくて、誘電率が測りにくかったからかも知れない。(別のデータによれば、1MHzでtanδが0.1くらい)。


  
 これらを、同軸ケーブルの外皮に網線をかぶせる形でシュペルトップを製作する場合について考えると、面白いことが分かる。

(1) 1MHz以上では塩ビの誘電率はかなり低下して、ポリエチレンの誘電率に近づく。

 とすると、シュペルトップを作る時に、短縮率を0.67(ポリエチレンの短縮率)としても、間違いでは無い

(2) 100MHzにもなると、誘電損失が大きくて、誘電体として使えない。(支持体として使う場合は形状に注意。インピーダンスの高いところに使わないほうが良い。)

 逆に言えば、シュペルトップは同調していなくても、誘電損失によって導体外部の電流を阻止できる。

 即ち、シュペルトップはλ/4程度の長さがあれば、細かい寸法はどうでも良いということだ。

 これが、シュペルトップの寸法に各論が有る原因だろう。つまり、短縮率は1.0でも0.67でも、0.57でも、要するに何でもそこそこの働きはする、ということだ。

 比較検討しなければ、自分が使った値が正しいように見える。
  
【注意1】
 これは普通の同軸ケーブル(塩ビの外皮)に網線をかぶせてシュペルトップを作る場合の考察だ。

 空気を絶縁体にしたシュペルトップでは短縮率は1.0でなければならないし、外皮がポリエチレンの同軸(5D2Eなど)であれば短縮率は0.67だ。



【注意2】
 これは十分高い周波数(100MHz以上)での考察だ。

 通常シュペルトップは2mバンド(144MHz)以上で使うが、中には50MHzバンドでシュペルトップを作るという奇特な人も居る。

 50MHzは中途半端で、塩化ビニルの誘電率がどのくらいか分からないし、誘電損失も十分大きくないとすると、シュペルトップの寸法はよくよく考えて決める必要が有る。

 50MHzならパワーをかけられるフェライトコアもあるので、シュペルトップを作る意味はない。