包丁を研ぐ(1)

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 我が家は昔から農家なので、砥石が沢山有るが、多くは今では手に入りにくい自然石の砥石だ。中には手製の砥石もある

 何十年も手入れせずに使っていた砥石なので、真ん中が1cmくらいへこんでいた。

 これをコンクリートの土間でこすって平らにした。いやいや、相当な重労働だった。

 しかし、おかげで真っ平ら。
 裏はまだへこみが残っているのだが、こちら側は研ぐのには使わない事にする。(研ぐ面は決めた方が良い。あちこち使うと、メンテナンスが悪くなる。)

 置いたとき安定すればよいので、この程度で良かろう。
 刃物を研ぐ場合に最も大切な事は、角度を一定に保って磨ぐ事だ。

 ネットで見ると、包丁と砥石の間に10円玉を2枚はさむと、刃先の角度が15°になるという。
  
 上の図のように、包丁の下に10円玉(あるいは1円玉)を2枚はさむと、15°になるという説明は、研ぎ屋さんや刃物やさんのサイトでよく見かける説明だ。本当かな。

 ネットでは、たまたまだれかが言い出したデタラメを、そのまま引用していることが非常に多い。ネットは都市伝説の宝庫だ。

 失礼だが、10円玉2枚で15°になるかどうか、計算してみた。

 10円玉の厚みを1mm、包丁の刃の幅を5cmとすると、上図の通り、2/50の arctan を計算すればよい。答えは7°ちょっとになる。

 両刃だから、刃先の角度は研ぎ角の2倍つまり14°くらいで、大体合っている。

 因みに、ナイフはもう少し刃先が鈍くて、20°くらいが良いそうだ。(ただし、これは肥後の守など日本のナイフのことで、西洋のナイフはさらに角度が大きい。)鉈や斧はさらに大きい。



 刃物を研ぐときに角度を一定に保つ道具がいろいろ売っている。300円くらいのものから2万円くらいまで各種ある。

 しかし、ちょっと練習すれば、まあまあ実用程度には研げるようになる。週に一度、家庭の包丁を手入れする程度なら、わざわざ道具を買うほどの事はないと思う。


   
 安物の包丁で練習する。これは4本セットで数千円の、本当の安物。(百均にも包丁はあるけど、それは別格。)

 上手く研げると、安物の包丁でも随分良く切れる。

 仕上砥があるともっと良く切れるようになるそうだが、素人はこんなもので良かろう。

 今度はナイフを研いでみようか。


 ステンレスの加工をしてみると分かるが、鉄と比べて粘っこくて、加工に手間がかかる。熱も電気も通しにくい。錆びない事を除くと、あまり扱いやすい金属ではない。(チタンはもっと面倒だそうだ。)

 ステンレスの包丁は鈍りやすいくせに、磨ぐには手間のかかる面倒な代物だ。