草の根広場

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 うちの村に「草の根広場」という小さな広場がある。昔、武村さんが滋賀県知事の時に、各自治会に集会所と広場を作りなさい、という指示があった。

 武村さんは飛び抜けて先進的な人で、「環境」という言葉自体をみんなが気にしていないような時代から、琵琶湖の環境のことをうるさく言っていた。

 集会所や広場は武村さんのオリジナルではないかも知れないが、地域の自治を考えた施策ではある。


 それはさておき、せっかく作った広場ではあるが、自治会は「権利無き社団」であって、登記の名義人になれない。仕方がないので、当時の自治会長(区長)の名義で登記した。

 当然、固定資産税はその人にかかってくるので、毎年その金額を自治会から支払っていた。


 さて、それから30年。名義人になってもらった当時の区長さんも高齢化してきた。もし亡くなったりしたら、相続などに関わって面倒なことになる。

 そこで、自治会を法人化して草の根広場を自治会名義にすることにした。実は、このような事例は全国各地にあって、国も法人化を奨励している。

 行きがかりから、この作業を引き受けることになった。2年の歳月を要したが、この度一応の決着がついたので、後のために記録を残す。

 なお、今回の作業のキーワードは「委任の終了」だった。



 作業は以下の通り。

1.認可地縁団体を立ち上げる
 (1) 規約の作成
 (2) 自治会総会での合意
 (3) 会員の募集
 (4) 市長による認可

2.草の根広場を登記する

3.税の減免を申請する
 (1) 登録免許税
 (2) 不動産取得税
 (3) 固定資産税
 (4) 所得税

4.実は、この広場は元は畑だったので、地目が「畑」のままになっていた。農地の名義変更は農業委員会の許可が必要だ。

  これはまずい。自治会は農地を持つことができないので、地目が畑のままでは名義変更ができない。地目を「雑種地」に変更しようとしたら、そこは「青地」だと言う。青地は地目変更できない

  何とも行き詰まっていたのだが、ネットを眺めていたら委任の終了の場合は、農業委員会の許可が不要だと言うことだ。有り難し。その線ですすめる。



 詳しく書くと。

1.認可地縁団体を立ち上げる
 (1) 規約の作成
  法人には「規約」が必要だ。規約の中には、「目的」「資産」「解散の手続き」等、必ず入れておかなければならない項目がある。財産目録なども整えなければならない。ネットで探すと見本が見つかる。

 (2) 自治会総会での合意
  土台になる団体で、法人化することについて可決しておく必要がある。申請の際に、その総会の正式な議事録を提出しなければならない。

 (3) 会員の募集
  認可地縁団体の会員はその地域の住民の過半数でなくてはならない。つまり、赤ん坊からお年寄りまでの内半数以上を会員にする必要がある。また、逆に、その地域に住んでいる人が会員になることを拒否することはできない

 (4) 市長による認可
  規約、財産目録、名簿など必要書類を添えて市役所に提出する。長浜市の場合、市民共同課が窓口だった。市の台帳に登録されるので、法人登記はしなくて良い


2.草の根広場を登記する
  登記は司法書士に頼むと結構な出費になる。登記の原因にもよるが、「委任の終了」であれば、案外簡単なので自分でやってみた。
  委任の終了でなければ、農地の名義人を変えるには農業委員会の許可が必要なので、かなり手間が増える。
  法務局へ行くと、やり方を親切丁寧に教えてくれた。書式をネットで探して、法務局で2,3回添削してもらって、提出する。登録免許税(印紙代)1,000円だけで済んだ。


3.税の減免を申請する
 (1) 登録免許税
  これは仕方がない。土地の評価額に従って、収入印紙を貼る。

 (2) 不動産取得税
  「委任の終了」であれば、不動産取得税はかからないので、減免手続きは必要ない。

 (3) 固定資産税
  公共の用途に使う物なので、減免申請する。窓口で、「えっ、今まで払っておられたんですか。」と言われてしまった。名義が誰であれ、実質公共の物であれば、減免の対象だそうだ。かれこれ30年間税金を払っていたのに。

 (4) 所得税
  例えば土地を寄付すると、寄付した人に、「売却したのと同じくらいの」所得税がかかることがある。寄付の形を取って脱税しようとする人が居るからだ。
  「委任の終了」であることが証明できれば所得税はかからない。登記の際に提出した「登記原因証明情報」の写しを提出すればよい。



 以上、一区切りついたので、記録を残す。今後、地目が畑のままでは何か問題が生じる可能性があるので、地目変更の方法も考える予定だ。

 そこが農地(地目が「田」や「畑」)であっても、そこが「青地」「白地」かで、扱いが違う。

 農業振興地域の内、さらに「農用地」として指定された農地を「青地」という。

 農地を他の用途に使う、例えば家を建てる場合は、地目を「宅地」にする必要がある。

 その農地が「白地」なら地目変更すればよいのだが、「青地」の場合は地目変更ができない

 まずは「青地」の指定解除をする必要があるのだが、こいつはかなり面倒だ。指定するのは行政の仕事だから、個人が申請して解除してもらう性質のものではない。

 と言っても、方法が無いわけではない。面倒だが、これもボチボチやってみよう。