リターンロスブリッジ(その2)の特性

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 試作した2種類のリターンロスブリッジタイプ(G)とタイプ( I )。

 G のタイプはネットで検索すると、製作例がいくつか見つかるし、かつてかなり議論もされていたようだ。

 しかし、3巻き線の強制バランはそもそも不完全であるし、見た目からして対称ではない。

 性能的には I のタイプが期待されるが、これだけごちゃごちゃしていると、浮遊容量がバカにならない。

 特性が暴れて、実用にならない可能性も高い。

 さて・・・。
 タイプ(G)。

 左側の棒状の部分が50Ω×4個のブリッジだ。

 このブリッジは可能な限り追い込んであるので、トランスの性能を調べることに集中できる。
 まず、X 点をアースしない状態。

 信号経路のことだけ考えると、X 点をアースしなくても良いように思われるが、変なディップが沢山有る。

 アースが取っていないと、変な結合をおこすのだろう。こんなに暴れていては使えない。
 X 点をアースしてみた。

 全体に落ち着いたし、低い方は大きなディップもなくなった。

 これなら、200乃至300MHzくらいまでは使えそうだ。
 ブリッジの片方をショートしてバランスを崩してみた。

 通過ロスが、周波数に従ってどんどん大きくなる。

 200MHz以上では20dB以上ある。

 これだと、リターンロスは30dB程度までしか測定できない。やっぱり、これでは上手くない。
 それでは、タイプ( I )はどうだろう。

 これだけコイルがたくさん巻いてあると、高い周波数での性能はまずダメだ。

 高い方を伸ばそうとすると、エナメル線でなくて、インピーダンスの分かった細いケーブルでコイルを作る必要が有る。

 低い周波数に特化して、どれだけ性能が出せるかに集中しよう。
 まずは、アースが取っていない状態。

 案外暴れていないし、300MHz以下なら十分使えるのでは?
 X 点をアースした。

 もうちょっと良くなったような気がするぞ。

 低い方の周波数用としては十分かも知れない。
 X 点に加えて b 点もアースした。

 100から300MHzが少し悪化した代わりに、100MHz以下が劇的に良くなった。

  やっぱり、高い周波数に関しては、何をやっても良くはならない。
 さらに、a 点もアースする。

 あまり変わらない。
 b 点のアースをはずして、a 点のアースだけにしてみた。

 100MHz以下が少し改善されたように見える。
 200MHz以下をアップにしてみる。

 上左が b 点、上右が a+b 点をアースした時の特性。

 右の写真が、a 点だけをアースした時。これが(2,3dBの違いだが)一番良い。
 ブリッジの片方をショートして、通過ロスを見てみる。

 20~30dBある。かなり大きい。上のa 点だけアースしたデータと差を取ると。

 一番良いところ(20MHzあたり)で70dB近く、200MHz付近でも50dB近くまでリターンロスが測定できるわけで、相当優秀と言って良いだろう。
 因みに、通過ロスを1GHzまで見てみると、こんな感じ。700MHzと950MHzあたりのディップは共振点でも存在するのだろう。

 周波数が高くなると急激に悪くなるが、もともと低い周波数用につくったものだから、そう思えば、500MHzで34dBは悪くない。
  
 結論としては、( I )タイプで、X 点と a 点をアースしたタイプは、200MHz以下に限れば相当良い特性だと自慢してよろしい。

 ただし、一番低いところ(5MHzより下)に関しては、私がスペアナの使い方が十分分かっていないので、保証の限りではない。別の方法、例えばノイズジェネレーターと受信機などを使って確認した方が良いかも。



 この予備実験を元に、次回は低い周波数用のリターンロスブリッジ・完成形の製作。

 予備実験は良くても、実装してみると拙いことになる、というのもよくある話なので、楽観は出来ない。