シュペルトップの短縮率(2)

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 シュペルトップを作る時に同軸ケーブルの短縮率0.67を使うのは間違いだ。

 網線で塩化ビニルの外皮をサンドイッチにした時の短縮率を求める必要が有る。

 前回はRG58Uの外皮の短縮率を測ったら0.56か0.57くらいだった。

 今回は5D2Vでシュペルトップを作る場合の短縮率を求める。
  
 同軸ケーブルの外皮の塩化ビニルは、重合率や添加物によって誘電率が大きく変化する。

 前回測定したのは「フジクラの黒い外皮のRG58U」で、その値がいつ も使えるとは限らない。

 もしかしたら、同じ5D2Vでもロットによって、誘電率が違うかも知れない。今回測ったのは、「フジクラの灰色の外皮の5D2V」だ。


  
 余談だが、シュペルトップの作り方について。(熱収縮チューブを2重にすること)

 同軸ケーブルをバラして取り出した銅網線を、同軸ケーブルにかぶせる。

 その上に熱収縮チューブをかぶせるのだが、熱収縮チューブで、網線を同軸ケーブルに密着させるのは難しい

 右の写真のように、チューブを2重にかぶせて、ギリギリ締め付けると良い。
 スペアナの周波数をキャリブレートする方法が分からないので、周波数マーカーを入れることにした。

 切りの良い発振器があると良いのだが、手持ちの都合で、6MHzごとにマーカーがでる。
 このディップの周波数が知りたいのだが、スペアナの周波数の精度が分からないので、マーカーを入れる。
 こんな感じ。

 マーカーの信号が、トラッキングジェネレーターの出力よりかなり弱いので、トラジェネの信号を絞って、スペアナのリファレンスを下げると、やっとこんな感じに見えるようになる。

 6MHz毎にマーカーがでるので、ディップの直近のマーカーを読んで、周波数を補正する。
 はじめは1mほどの同軸ケーブルが、切り刻まれて、こんな事に。
 同軸ケーブルの片方をオープンにして、反対側から見ると、λ/2毎にインピーダンスが無限大になる。

 リターンロスブリッジのリファレンス側のダミーロードをはずしてオープンにする。
  
 そうすると、測定対象の同軸ケーブルがλ/2の整数倍毎に上のようなディップがでる。

 従って、この時の同軸ケーブルの長さの2倍が、この周波数における同軸ケーブル内の波長だ。

 
  
 長さ毎にディップの周波数を測定する。周波数が低いと、上の写真の様に、1GHzまでにディップがたくさんでる。

 同軸ケーブルを切り詰めて、短くなると、周波数が高くなってきて、1GHzまでのディップが少なくなる。

 徐々に少なくなるが、結局71個のデータを得た。上の値はマーカーを使って補正したもの。

 そのデータを使って短縮率を求めると、下のように、0.58~0.59辺りの数字が多い。

 下の表の「長さ」は、短縮率の分散が最小になるように補正中の値。

    
 長さは右の写真の通り、外側の網線がかぶっているところから測定した。

 一方、リターンロスブリッジのリファレンス側ははずしてある。

 従って、BNCコネクタや、コネクタと同軸の接続部分の長さを補正する必要が有る。

 上の表をグラフにすると下のようになる。
 横軸は周波数、縦軸は短縮率。各ラインはある長さの同軸ケーブルで、違う周波数で計算した値をつないだもの。

 およそ0.575から0.595の辺りに収まっている。

 長さを+0.9cm補正すると、データの標準偏差が最小になるので、この値を採用する。
  
 この時、短縮率は0.588、誤差は0.8%以内になる。

 前回、RG58Uの短縮率を求めたので、合わせてまとめておく。

【まとめ】
(1) フジクラの黒い外皮のRG58Uの短縮率は、0.57である。

(2) フジクラの灰色の外皮の5D2Vの短縮率は、0.59である。

 大体同じだが、この差は厳密な短縮率と言うよりは、シュペルトップの作り方の差によるのではないか、という気がする。

 というのは、「RG58Uは細くて、網線が密」で、「5D2Vは太くて、網線が粗い」。同じように作ると、RG58Uの方がきれいなシュペルトップが出来る。

 出来の悪いシュペルトップでは、隙間が大きいので誘電率が小さく、従って短縮率は大きくなる



 念のためだが、この時の「短縮率」は普通に芯線と網線にRFを流した時の短縮率ではない。その場合の短縮率は規格にも書いてあるし、メーカーの発表にもあるとおり、0.67だ。

 これは、私も測定してみたが、同軸ケーブルの種類に関係なく、ポリエチレン絶縁の同軸ケーブルならば、すべて同じだ。


 シュペルトップは、同軸ケーブルにさらに網線をかぶせて3重構造にしたもので、内側の網線と外側の網線によって構成される。従って、この時の絶縁体(=誘電体)はポリエチレンではなく塩化ビニルだ。

 短縮率=1/sqrt(εr)で、塩化ビニルの比誘電率は2.8~8.0なので、短縮率は0.35~0.60となり、上の結果はおよそ妥当な値だ。(ギリギリとも言う。