リターンロスブリッジのトランス その1

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 (A) がブリッジの基本形だ。R1/R2=R3/R4 の時、ブリッジがバランスして、DETに出力が出なくなる。

 R1=R2=R3=50Ωにしておけば、R4が50Ωからどれだけずれているかが、DETに電圧として出てくる仕組みだ。(R1とR3は同じであれば、50Ωでなくても良いが、面倒を避けるために、普通は50Ω付近を選ぶ。)



 さて、RFINやDETには同軸ケーブルをつなぐので、線路の片方をアースに落としたい。

 ところが、入力側のa点、出力側のb点を両方ともアースに落とすと、当然R2がショートしてしまう。ブリッジも左右非対称になって具合が悪い。

 そこで (B) の様にトランスを入れて、b点を浮かす。こういう配線のリターンロスブリッジは市販品にもあるし、自作している人も居る。

 しかし、このトランスはコンベンショナルトランス(普通のトランスのこと)なので、広帯域にしにくいし、ロスも大きい。



 そこでさらに、このトランスを伝送路トランスに置き換えて(C)のようにする。このスタイルのトランスをフロートバランという。市販のリターンロスブリッジも自作のリターンロスブリッジも、この構成のものが多い。

 私が作ったのもこれだ。



 この構成で問題なのは、フロートバランの周波数特性だ。

 フロートバランはコモンモードフィルタ、即ちチョークに過ぎない。

 巻き数が少ないとインピーダンスが足りなくて、低周波数側の特性が悪くなる。巻き数が多いと浮遊容量が大きくなって、高周波数側の特性が悪くなる。

 巻き数が少なくても大きなインピーダンスを得ようとすると、μの大きなコアを使うことになるが、一般にμの大きなコアは高い周波数の特性が悪い。

 忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず。やんぬるかな。

 フロートバランを使っている限り、広帯域、特に低い方に周波数特性を伸ばすのは難しい。



 そこで、強制バランを使うことを考えてみた。

 私がリターンロスブリッジを使うとすれば、455KHzの中間周波増幅回路が一番低い周波数だろう。実用的には、最低200KHzとして、上はどこまで伸ばせるか検討する。


   
 これが基本構成だ。ただし、これでは問題が残っている。

 3巻き線の強制バランは、見た目の対称性も、伝送路トランスとしての動作も完全ではない。

 こいつをどう始末するか。

 次回、解決編に続く。乞うご期待!!