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 八草峠を越えて、岐阜県揖斐川町から、林道鳥越線を登る。

 岐阜側の登山口は鳥越峠のすぐ下で、金糞岳山頂まではいくらもないのだが、最近はここから登る人が多い。

 登山口のあたりまで来ると雪がある。わずかな雪だが、そのつもりをしてこなかったので、今日のところは中止とする。
 一旦滋賀県側に下りて、グルッと回って余呉から福井県に抜ける。

 柳ヶ瀬トンネルを福井側に抜けると、すぐに玄蕃尾城方面へ伸びる林道入り口がある。

 林道終点は広場だが、なんと、きれいに舗装して駐車場になっていた。

 何故かベンツが止まっている。
 駐車場から5分も登れば、もう峠だ。

 単なる峠ではなくて、深い堀切になっている。

 「刀根越え」とか「久々坂峠(くぐさか)」とか呼ばれて、滋賀県と福井県の重要な往来だったようだ。

 十字路で、峠を下りると、東は滋賀県柳ヶ瀬、西は福井県刀根。登れば北は玄蕃尾城、南は行市山だ。
 福井側の駐車場からはすぐだが、柳ヶ瀬から登るのは、少し距離がある。

 行市山方面への道は、不明瞭で、薮こぎの覚悟が必要だ。

 峠から玄蕃尾城方面はちょっとした急登で、10分か15分ほど登ると、ほぼ水平な尾根に出る。

 登りはそれだけだ。
 尾根は広々としていて、日当たりの良いところで、いつまでもゴロゴロしていたいものだ。
 とか思って、足元を見ると、至る所に鹿の糞だらけ。

 ゴロゴロどころか、糞を踏まずに歩くのも難しいくらいだ。
 玄蕃尾城は賤ヶ岳の合戦の際に、柴田勝家が本陣を構えた砦だ。

 ずいぶん大きなもので、良く保存されていて、一見の価値はある。

 風が冷たいので、土塁の陰に座って昼飯を食う。

 気がつくと、弁当の下に鹿の糞があった。
 S君は、柳ヶ瀬に下りてみるという。

 私は福井側に下りて、車を柳ヶ瀬に回しておく、と言って峠で二人は西と東に別れたのだが。

 果たしてS君の運命や如何に。