1,2,3月の日記に戻る

 問題文を読むと、「窓から飛び込んできた野球のボールが金魚鉢に当たって、金魚鉢が割れた」という状況をすぐに思い浮かべることが出来るだろう。

 しかし、それと「二人の男女が死んでいること」とどう関係が有るんだ?

 と思わせるには、2つのミスリードがある。

(1) 金魚の名前が「幸恵」と「雄一郎」という、人間と思わせる名前をつけてある。

(2) 文の順番がわざと誤解しやすいようにしてある。

 A.「村井が部屋に入ると、窓は開け広げられ、床に水たまりが出来ていた。その中に、幸恵と雄一郎は互いに寄り添うように死んでいた。あたりにはガラスの破片が散らばり、野球のボールが落ちている。

 これだと、水たまりの中に二人の男女が倒れている情景がイメージされる。その後、金魚鉢が割れているのを知っても、イメージに邪魔されて思い込みの修正がされにくい。

 もしこれが、逆の順番で書かれていたら、違う印象だっただろう。

 B.「村井が部屋に入ると、窓は開け広げられ、床に水たまりが出来て、あたりにはガラスの破片が散らばり、野球のボールが落ちていた。その中に、幸恵と雄一郎は互いに寄り添うように死んでいた。

 このように、先に金魚鉢が割れていることが分かれば、そこに死んでいるのが金魚であることに気付く人は多いだろう。



 ところで、問題とは関係ないが、「村井」が男だと思い込んでいなかったかな。

 「君」も「さん」もつけずに「村井」という言い方。

 男は名字で、女は名前で言うことが多い。小説だけでなく、ニュースなどでもそうだ。だから、勝手にそう思い込むが、いつもそうとは限らない。

 他人にいいようにミスリードされたくなければ、そんな事にも気をつけよう。