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 例えば、仕事の進行についてだれかに質問する際に、言い方によって印象が違う。

(例1)「次は、どうしたら良いですか。」

(例2)「次はこれこれのようにしたいと思いますが、どうでしょうか。」



 例1のような言い方ではいかにも「指示待ち人間」という印象を与える。例2のように、自分から具体的な提案を出していく方が印象がよい。

 もし、「いや、むしろこうした方が良いのではないか。」と、提案を否定されたとしても、得る物が有る。



 また、例2の質問の方が相手から良い答えを引き出せる。それは、人は何かを手がかりに物を考えるからだ。

 「どうしたらよいか」とたずねられて、一から考えるより、「こうしたいが、どうか」とたずねられて、それに答える方がエネルギーが少なくて済む。

 答えるのに多くのエネルギーを必要とするような質問をすると、「めんどくさいやつだ」と思われる可能性が大きい。

 逆に少ないエネルギーで良い解答ができるような質問をすると、あいてのプライドをくすぐることができる。



 上手く質問をして、相手から良い解答を引き出す方法については、ホームズが「四つの署名」の中でオーロラ号を探すときに、コツを語っている。

 「それはどんな船ですか?」と聞くより、「それは緑色の船ですね?」と質問した方が良い答えを得られる。



 心理学の用語だが、質問には「閉じた質問(closed question)」と「開いた質問(open question)」がある。

 「これは犬ですか。」「あなたの出身高校はどこですか。」の様に、答えが限られている質問が「閉じた質問」だ。

 「東京オリンピックについてどう思いますか。」とか「被害者を発見したときの状況を説明して下さい。」のように、答え方を回答者が決定できる質問を「開いた質問」という。



 質問するときは、「開いた質問」か「閉じた質問」か、ハッキリ意識すると良い。



 例えば、初めて会う人と打ち解けたいときは、閉じた質問から始める。

 「ご趣味は何ですか」、「ここの料理は少し味が濃いですね」、「暑い日が続きますね」などなど。

 閉じた質問ばかりでは、警察の尋問のようになるので、開いた質問で話を深めていく。

 「ゴルフの面白さって、どんな事ですか。」、「どんな製品をつくっておられますか」などなど。

 閉じた質問に見せかけて開いた質問をすると、良い答えを抵抗なく引き出せる。

 「今度の新製品はターゲットをかなり絞り込んでおられるようですね」、「虐待の兆候は有りませんでしたか」、というような質問は「はい」、「いいえ」で答えられるが、普通はそれで終わりにはしにくい。自然に次の言葉が出てくる。



 このような視点から見ると、最初の(例1)は開いた質問、(例2)は閉じた質問に見せかけた開いた質問であることがわかる。