アンテナアナライザーBR-210の修理

マッドな研究所に戻る
  English
 クラニシのアンテナアナライザーBR-210。送信機のタンク回路を測定中、誤って送信して、故障してしまったという。

 心臓部のリターンロスブリッジが燃えてしまった可能性がある。

 それだけなら簡単に治るかも知れないが、周囲の回路まで被害が及んでいると、面倒なことになるだろう。
 裏ぶたを開けると、基板が3枚+αに分かれている。(αはブリッジ部分。小さな基板がコネクタにこびりついている。)

 「表示」、「発振」、「カウンター」と「リターンロスブリッジ」だ。

 上の写真の通り、周波数はチャンと表示するので、発振部とカウンター部は問題ない。

 リターンロスブリッジだけなら、オーライ。表示部まで壊れていると、面倒だ。
 BR-210の回路図は無かったが、BR-200とBR-510の回路図を見たところ、構成は大体同じだった。

 発振回路にはAGCがかかっていて、一定の電圧をリターンロスブリッジに送っている。

 そのAGCは、BR-200では発振の安定のためのようだが、BR-210にはメーターのフルスケール調整ダイアルすらない。

【追記】200,210,510の違い
 表示回路はメーターに直接ネジ止めしてあるので、まずこれをはずす。

 心臓部のリターンロスブリッジは小さな基板にまとまっていて、M型コネクタに直接半田付けしてある。

 この部分の部品が燃えている、という可能性が高い。
 普通に考えたら、コネクタに直接つながっている50Ωの抵抗とダイオードが怪しい。

 念のため回路図をおこしてみる。

 やっぱり、Rxに電力を入れて、燃えそうな所はそこだ。もし、910Ωとか10kΩとかが燃えているようであれば、表示回路基板の方もやられている可能性がある。
 と、準備をして、当たってみると。

 抵抗は全部OK。D1、D2もOK。

 D3,D4がアウト。やっぱりね。

 大きさが違うので、収まりが悪いが、手持ちの1SS16と取り替える。
 全部組み直して、電源を入れる。コネクタにダミーロードをつなぐと、バッチリOKだ。

 案外簡単に直ってしまった。

 ちょっと問題が有る。多分、取り替えたダイオードの特性が元のと違うからだろうが、メーターの目盛りが少し(0.2)程ずれる。
  
 ショットキーダイオードは型番によって特性の違いが非常に大きい。

 普通のPN接合とショットキーダイオードは動作原理が違う。(実は、私は点接触ダイオードとショットキーダイオードの違いが分からない。)

 PN接合ならVfがゲルマニウムなら0.2V、シリコンなら0.6Vくらいと決まっている。

 ショットキーダイオードはVfやV-I特性が型番によって大きく違う。


 それはさておき、ダイオードを換えたので、メーターの表示を調整し直さなければならないのだが、BR-210の回路図がない。

 表示基板を見ると、2回路入りのオペアンプが2個(つまり合計4回路)乗っている。

 1回路はAGC、もう1回路はメーターを振らせるため。だから2回路で十分だ。残念ながら、私には4回路も使っている理由が分からない。実際、BR-200とBR-510は2回路しか使っていない。

 回路図をおこしてみれば分かるのだろうが、大変面倒臭いので、ゴメン。


 従って、基板上に有る4個の半固定抵抗の意味が分からない。このどれかを調整して、メーターのフルスケールを合わせるのだろうが、適当に動かして元に戻らなくなったらなおさら面倒だ。

 というわけで半固定抵抗にはさわらず、BR-210の修理はここまでとする。SWRが0.2ほどずれるが、実用上はボトムが分かれば良いので、絶対値はそんなに問題は無い。(←言い逃れ!!)



 アンテナアナライザーを作ろうかな、と思っているところに、アンテナアナライザーを修理する機会を得た。有り難し。実物をバラしてみると、なるほどそれは気がつかなかった、という発見が多い。先人の仕事には学ぶべきだ。


【蛇足:1】ネットを見ると、このシリーズのアンテナアナライザーの評価は高い。しかし、この構成や実装を見ると、綿密に設計したという印象は受けない。どちらかというと、豪快な設計という感じがする。

【蛇足:2】今回、交換用に手持ちのショットキーダイオードを使って、おや、在庫が寂しくなってきたな、と感じた。100本単位で買うのだが、遠慮無く使っていると、すぐに少なくなってくる。

 そこで、補充を考えたのだが、秋月で見ると、もう検波に使えるショットキーダイオードはほとんど無い。わずかにチップダイオードが1種類有るだけで、足の長いものは皆無だ。スイッチング用や整流用は細分化されてたくさんあるのに。

 検波などにショットキーダイオードを多用する人は、買い込んでおいた方が良いと思う。


【追記】ネットで拾い集めた写真や回路図を見ると、BR-200,210,510の違いは。

 BR-200と210は回路的にはほぼ同じ。部品や実装を変更して、メンテナンス性を良くしたのが210のようだ。

 しかし、そうなると210に2回路入りオペアンプ(NJM4558)が2個も使ってある意味が分からない。

 BR-510は発振回路を2個持っていて、1個は430MHz帯専用のようだ。さらに510には、430MHz専用のN型コネクタのある機種と、コネクタは一つでスイッチで切り替える機種が有る。

 510の実装は210と似ていて、恐らく210でメンテナンス性が良くなったので、それを継承したのだろう。

 上に、メーターのフルスケール調整ダイアルが、210には無いが200と510には有るような書き方をしたが、間違い。写真を見る限り、どれにも無い。どれも自動化されているようだ。